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中小企業のSDGs、地域で見つけた「勝ちパターン」 職場のSDGs研究所 白井旬代表(下)

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SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みでは、大企業が進める大がかりな事業に光が当たりがちだが、地域に拠点を置く中小企業の間でもSDGs関連プロジェクトの成功例が相次いでいる。中小企業向けにSDGsとの向き合い方を指南する「職場のSDGs研究所」(那覇市)の白井旬代表は「地域の中小企業ならではのアプローチで結果が出始めている」という。著書『経営戦略としてのSDGs・ESG』(合同フォレスト)で取り上げた事例に沿って、地域の中小企業に向いたSDGs事業の進め方を教わった。(前回記事「中小企業こそ大きいSDGs効果 社内の課題解決から」)

中小企業の経営者には「SDGsは持ち出しが多い」という誤解があるという。しかし、白井氏は「SDGsは単なるきれいごとではなく、事業発展を通じてもうけにつながるケースが多い」と、頭の切り替えを促す。経営者向けのセミナーでも、地域の中小企業が収益面や人材面で実績を上げている事例を紹介すると、参加者の反応が熱気を帯びるそうだ。

帳簿上の数字で収益に貢献するのは、主に売り上げ増とコスト削減の2パターンだ。カット野菜製造の農業法人、グリーンフィールド(那覇市)のケースは両方を兼ねた。もうかるSDGs事業のきっかけになったのは、沖縄名産の野菜、ゴーヤーだ。

ゴーヤーには「わた」とも呼ばれる、種を含む部分があり、カット野菜では取り除いていた。しかし、フードロスや廃棄処分費用の課題を感じて、活用法を探った末、台湾に茶の原料として輸出するという解決策が見つかった。廃棄物が減って、環境負荷が下がるのに加え、処分コストが不要になり、売り上げも伸びた。「無駄なコストや作業を洗い出す試みがSDGsにつながることは珍しくない」(白井氏)

SDGsには地球温暖化や飢餓、貧困などのグローバルな課題が挙げられているせいもあってか、いわゆる「意識高い系」の取り組みというイメージを抱かれがちだ。地域の中小企業では「大所高所の話であり、自分たちには縁遠い」と、距離感が生じやすい。だから、白井氏は「地域の中小企業が自分たちの等身大に課題を再設定して、『もうかる』というメリットを意識して臨む必要がある」と説く。

経営が厳しい地域の中小企業に利益の出ない事業を続ける余裕はない。「もうからないと感じたら、やめてしまいかねない。事業の持続性という意味で、収益面のリターンは無視できない」(白井氏)。逆にいえば、利益が生まれるのであれば、SDGs関連の取り組みを続ける意欲が引き出されるわけで、成功を知った同業他社や同一地域内他業種への波及も見込める。

自己防衛の観点からも、SDGs対応は地域の中小企業の未来を左右する。サプライチェーン(供給網)全体にSDGs対応を求める動きが大企業を中心に広がりつつあるからだ。脱炭素に向けた具体的なアクションを調達条件に盛り込むケースが増える傾向にあり、「説得力を持った取り組みを進めていないと、ステークホルダーとして認めてもらえない状況に至りかねない」(白井氏)。商品・サービスの選択理由にSDGsを加える消費者も増えていて、SDGs対応は生き残りの条件となりつつあるようだ。

 

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